【馬渕レポート】ジェリフェ・ニュース2024年12月号

馬渕 磨理子

【今月の巻頭言】
デジタル赤字5兆円の二の舞を踏まぬよう。国内の金融資産が、日本国内への企業に投資をする流れを本気で考えなければならない。

■米国株は市場高値更新、日本株は鈍い動き
グローバル市場はトランプ氏の関税発言に揺れ動いているものの、当の米国株はNYダウ、S&P500が市場最高値更新を続けている。米次期政権の閣僚のうち財務長官を著名投資家であるスコット・ベッセント氏を指名、国家経済会議(NEC)委員長には減税による経済成長を重視するケビン・ハセット氏を起用する方針を固めた。金融や経済に明るいとみられる人事に米国株は好感。リスクマネーが米国株を選好する動きが見られる。一方で、日経平均は鈍い動きに終始している。大統領選挙投開票から11月29日までの株価のパフォーマンスはNYダウ(+6.99%)、S&P500(+5.35%)、日経平均(▲-0.19%)と日米差が鮮明だ。

■ベッセント『3・3・3』経済論
トランプ氏の掲げる減税・財政拡大は債務を拡大させドル不信を招きかねない。ベッセント氏は以前から米国が抱える債務について懸念を示し、その解決策として減税による税収増に言及している。米紙ウォールストリート・ジャーナル(WSJ)によれば、故安倍晋三元首相が過去に提唱した「3本の矢」に倣う経済政策として「3・3・3」をトランプ氏に提言した。―①「次の大統領選がある2028年までに財政赤字を国内総生産(GDP)比で3%まで削減」②「規制緩和によってGDP成長率を3%に押し上げ」③「原油生産を日量で300万バレル増産」―こうしたコストカット、規制緩和、減税を織り交ぜながら、税収拡大と経済成長を遂げる筋書きがしばらくメインシナリオとなりそうだ。

■日本株投資にインセンティブを
奇しくも、読売新聞グループが11月28日に独自の株価指数「読売株価指数(読売333)」を、来年3月から公表すると発表した。国内で上場する333社の銘柄を組み入れて算出する新たな指数。大企業や特定企業の動向に左右されにくいという特徴があり、将来的な成長の余力がある企業の動きを取り込み、光をあてるきっかけになればと思う。国内の金融資産が、日本国内への企業に投資をする流れを本気で考えなければならない。デジタル赤字5兆円。気づけばITやDXインフラまでも海外に依存している。食料自給率はカロリーベースで約38%、エネルギー自給率は約13%と低い。金融もそうなりかねない。全く動いていなかった個人の金融資産2000兆円が動き出したが、向かうのは米国市場。歴史的にパフォーマンスが良好であり、上段の通りリスクマネーが流入しやすい構造、ストーリー持つ米国に資金は引き寄せるのは自然な流れだ。しかし、日本国内の金融資産までもが、海外に傾きすぎれば国内の好循環も難しくなる。NISAの拡充など、個人が資産形成ができる環境づくりが進む中で、日本国内への企業に投資をする流れを本気で考えなければならない。国内の金融資産は国内で育てて、恩恵を受けられる仕組み、制度作り。日本株投資へのインセンティブ設計を。手遅れになる前に対策を打つべきだ。

一般社団法人日本金融経済研究所 代表理事/経済アナリスト
著書
▪書籍『5万円からでも始められる! 黒字転換2倍株で勝つ投資術』(ダイヤモンド社)
WEBサイト:https://mabuchimariko.jp/