中東情勢の懸念後退を受けての株価の上昇。馬渕さんは、どうご覧になりますか?
馬渕)本日の株価を押し上げたのは、3つ理由があります①地政学リスクの緩和、②原油価格の下落、③アメリカの利下げ、前倒し「7月説」が影響しています。この株高は、あくまで短期的なもので、国際社会の枠組みが再編されようとしている中で日本がどの道を行くかによって長期的には日本株も、その影響を受ける可能性があります。
それは、どういう事でしょうか?
馬渕)例えば、足元でのポイントはNATO首脳会議です。ここでの焦点は2つ。①イラン攻撃への事実上支持をNATOがどう示すか。②防衛費をインフラなど広義の安保分野も含めてGDP比5%まで引き上げるか……です。トランプ政権の強い要請や、安全保障を高めざるを得ない欧州の現実があります。石破総理は中東情勢の緊迫化を踏まえて日本を留守にすることを懸念してNATO首脳会議への出席を取りやめたとされていますが……。国際社会の安全保障に、日本はコミットメントする意思があるのか。この視線は世界から注がれていて。いま、日本の選択が問われています。
日本の選択という事ですが、具体的には?
馬渕)具体的には軍事費のスタンスです。現状、日本を含めて、防衛費はGDPの2%未満。という国は多いです。NATOの軍拡圧力に巻き込まれずに、日本独自のスタンスを貫くメリットとしては……。無理に防衛費を膨らませず 国の財源を、企業活動や成長投資などに残せます。一方で、この流れにのらない、デメリットもあります。欧州が本気で軍拡に動けば金融的には、日本より欧州に魅力を感じる可能性もありますいま、日本株の“地政学的な安全資産”、日本の防衛関連の魅力は欧州より薄れる可能性があります。いずれにしても、日本として 変化を続ける地政学リスクの中で国民を守るために軍事・防衛について考える必要があります。
いずれにしても、極めて難しい判断が求められるようですね
馬渕)今回のNATO会議における日本の対応は、短期的には日々の市場変動に埋没する話かもしれませんが……。中長期的には日本の経済安全保障に影響を与える可能性があります。日本の国際社会における信頼性と影響力に直結する。その視点を決して忘れてはならないと私は考えます。