株主総会で役員人事などが選任されましたが馬渕さんは、どうご覧になりますか?
馬渕)初の外国人社長となるスティーブン・デイカス氏はウォルマートでの経営や、日本企業でのトップ経験も豊富です。この人事は、グローバルな視点や経営改革の加速、海外投資家へのアピールを狙ったものかと思います。
いま、なかなか厳しい経営環境にあるようですね
馬渕)金融の目線で言うと、投資家から預かったお金でどれくらい稼いでいるのか表すセブン&アイのROE・自己資本利益率を見ると……過去5年平均で6.4%となっていてグローバルの小売業界の平均である12~16%を大幅に下回っています。 国内ではコンビニ事業の成長鈍化や物価高・節約志向といった外部環境の変化への対応に迫られ……海外では、北米・アジアでのM&A戦略など、収益モデルを再構築する実行力が求められます。
カナダの大手コンビニ、クシュタールから買収提案を受けていますが、これについてはいかがですか。
馬渕)買収提案を受け入れるか、独自の成長路線をとるのか。選択を迫られている状況です。夏頃までにクシュタールは事業計画を盛り込んだ買収提案を再度出す見通しで、セブンは中期経営計画を出す見通しです。どちららの案が株主にとって有益かといった見極めになります。クシュタールはいま、セブンの加盟店のオーナーに接触して加盟店オーナーを取り込む動きがあります。ただ、セブンとクシュタールが一緒になるにはアメリカの独禁法への対応が必要になります。具体的には、互いにアメリカで展開しているコンビニ店舗を整理する必要があるなど現時点で買収成立の確実性は不透明。日本国内では、セブンが外資になること自体が直ちに「問題」とは言い切れませんが……。コンビニは「生活インフラ」でもあり経済安全保障としての問題。さらには地域経済に対する雇用への影響など、多面的な課題やリスクが存在します。単なる経済合理性だけでなく、総合的に判断する必要があるとされています。セブン&アイは“選択と集中”と“グローバル経営”の両立を図らなければなりません。単なる防衛策ではなく、攻めの成長戦略とその実現プロセスが問われています。