2025年5月12日「2024年の経常収支 30兆円超で過去最大の黒字に」
経常収支が過去最大の黒字ということですが馬渕さんはどうご覧になりましたか?
馬渕)これは、「日本は稼ぐ力」外貨を獲得する能力があるということで、一見すると喜ばしい状況です。しかし、何で稼いでいるのか 中身を詳しくみると楽観できない側面も浮かび上がってきます。
「楽観できない側面」とはなんでしょうか
馬渕)経常黒字の最大の要因は、海外の子会社からの配当金や証券投資による利子・配当収入である「第一次所得収支」の大幅な増加です。「日本は投資で稼いでいる国」なのです。ここには、大きな問題が実は、あります。かつての日本の稼ぎ頭であった「貿易収支」は4兆480億円の赤字であり日本は輸入コストが大きく、輸出では稼げていないわけです。最も深刻なのは、第一次所得収支として得た海外からの収益が、必ずしも日本国内の経済活性化に結びついていないという点です。日本企業が海外で得た配当や利子の多くは、現地の設備投資や雇用に再投資される傾向にあります。結果「外貨のストックは増えますが、国内経済は浮揚しない」という現象が生じています。
国内経済の浮揚につなげるには何が必要になってきますか?
馬渕)いまは、トランプ関税で身動きが取りづらいです。日本の企業はアメリカに生産拠点を置かざるを得ず。日本は、アメリカの自動車、飛行機、農作物、エネルギーを購入するながれが加速しそうです。とは言え、発言がどんどん変更される短期的なトランプ関税に左右されず、日本として、長期的な視点に立ったブレないスタンス・政策が求められます。地政学リスクの高まりを考慮すれば国内の製造拠点の維持・強化は経済安全保障の観点からも重要です。国内への投資を促すための税制優遇や支援策が必要です。海外で得た「富」をいかにして国内の成長と国民生活の向上に結びつけていくのか。そのための具体的な道筋を、虎視眈々と描き、実行していくことが。今後の日本経済にとって必要なスタンスだと思います。
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