トランプ関税をきっかけに、金融の舵取りも難しい局面を迎えたようですね。
馬渕)■加藤財務大臣とベッセント財務長官の会談、交渉において重要な点があります。それは、いま、トランプ大統領の焦りが透けて見えて、弱点があぶり出されているという事です。そのため、トランプ大統領の発言修正が相次いでいます。例えば……。FRBパウエル議長の解任を、否定したり、あれほどこだわっていた中国への関税を半分程に引き下げる可能性について報道が出ています。軌道修正が迫られていますこれはトランプ関税に対して金融市場がNOを突き付けた結果です。米国株、債券、ドルがトリプル安に見舞われ、景気の回復にブレーキとなる長期金利が上昇してしまったのです。投資家のアメリカ離れの動きです。
今後の為替の行方については、どうご覧になりますか?
馬渕)■加藤財務大臣とベッセント財務長官の会談では為替相場の目標などを協議しないとの事ですが……。これは、実際に会談が始まらないとわからない為替市場は投機的な動きによってオーバーシュートしがちです。もし「思った以上の円高」が進行すれば……。日本経済の回復の芽を摘み、デフレ脱却に向けた金融政策、すなわち利上げへの道をも閉ざしかねません。
焦点の日米交渉については、いかがですか?
馬渕)■いかに米国の政策が大胆に振れようとも、日米の構造的な制約から逃れることは出来ません。世界最大の米国債の保有国は日本でありその「静かなるプレゼンス」(存在感)は米国が恐れるものになっていますただし、日本はこの強力な「武器」を決して振りかざしてはいけません。日本側が米国債売却を交渉カードとしてちらつかせれば、それはドル基軸体制の崩壊や世界経済の大混乱につながることもあります日本は持っている、その事実だけで十分です。日米の相互依存、あるいは「金融・相互抑止」とも呼べる構造は、日米同盟の深層をなす、もう一つの顔でありアメリカが日本に強硬に出にくい、理由の1つです。