【出演】フジテレビ LiveNewsα 「日本製鉄 USスチール買収禁止命令で訴訟」解説(日本金融経済研究所 代表理事/馬渕磨理子)

2025年1月7日 
「日本製鉄 USスチール買収禁止命令で訴訟」 今回の提訴、どうご覧になりますか?

馬渕)裁判のポイントは2つあります。一つは、買収中止命令は、政治的な思惑によって出されたものではないかということ。USスチールの買収をめぐって、
85万人の組合員をもつ全米鉄鋼労働組合(USW)が一貫して反対しています。バイデン大統領、その後を継ぐトランプ氏の判断に影響を与えた可能性があります。

もう一つのポイントについては、いかがですか?

馬渕)同盟国である日本の企業と組むことのどこに安全保障上の問題があるのか?という事です。買収については、1年以上かけて議論しています。本当に安全保障の問題があるのならば……。バイデン大統領はもっと早くに買収禁止を、命令できたはずです。日本製鉄としてはアメリカの安全保障の視点から買収の是非が判断されたものではない。勝訴の可能性があると考えており、これはUSスチールも同じ立場です。

今後、USスチールはどうなっていくのでしょうか?

馬渕)いま世界中の鉄鋼メーカーが苦しい状態にあります。USスチールは経営難です。世界シェアで5割以上を占める中国の鉄鋼メーカーが市場が低迷しているのに、過剰生産をやめず、安値で輸出の拡大を行っているからです。USスチールは日本製鉄からの世界トップレベルの技術支援や資金アシストが絶たれてしまうと
さらに厳しい経営を強いられる可能性があります。

一方の日本製鉄については、いかがですか?

馬渕)今回の訴訟を通じて、日本製鉄の米国事業の停滞は避けられないです。しかし、日本製鉄は、法廷闘争だけが戦いだけでなく、トランプ新政権チームへの接触など様々なロビイング活動を進めていくことになります。トランプ氏は輸入品に高い関税をかけて、製造業を再び強くしたい、労働者に豊かな暮らしを取り戻すとしていますが……日本製鉄とUSスチールが共に歩むことが、トランプ氏の願いに沿っていることを
納得させられるかどうか。まさに、ディールの行方を、見守りたいです。