フジテレビ「LiveNewsα」において、当法人の代表理事、馬渕磨理子が「円安126円超え」に関してコメントいたしました。
出演:2022年4月13日
一時126円台 約20年ぶりの円安水準 企業に影響「逆風がそろった」 (fnn.jp) (出演動画)
背景にあるのは、日米金利差です。ただ、126円となると、2015年に125円まで上昇した際に、日銀の黒田総裁が「これ以上は円安になりそうにない」と発言した「黒田シーリング」を突破したことになりますのでインパクトは大きいです。では、ここから、為替がどこまで円安に進むのかは過去の事例を見ることになります。足元では、鈴木財務大臣や岸田総理は過度の円安に対する懸念を相次いで表明していますが、今回一段と円安が進みました。つまり、日本政府が「円安進行を嫌がっている」というメッセージを出してはいるものの、政府の口先介入だけではドル高・円安の流れを堰止めることはできないと考えられます。口先だけでなく「ドル売り・円買い」の介入に踏み切らない限り引き続き円安は進む可能性があります。かつ、日本政府単独で介入しても、その賞味期限は短いです。過去に、米国と日本が「協調介入」(ドル売り・円買い)したことがあります。その時の円の水準がどれくらいだったかを確認することで、いくらまで行けば円安が止まる協調介入があり得るのかを考えることができます。協調介入は1985年「プラザ合意」、1990年「パリ合意」、1998年「ワシントン 円の下落修正声明」の3回しかありません。その中で、直近の1998年の「円の下落修正」表明の時の円は140円と今よりも遥かにドル高・円安ですので、現段階で、協調介入が発動されることは考えにくいです。そのため、まずは目先のターゲットは2002年に記録した135円となる可能性があります。
日本の円安は、日米金利差だけではありません。日本の「稼ぐ力」が衰えているために、円の価値が下落しているとも考えられます。原油価格や穀物価格の上昇に加えて、円が安くなると、モノを輸入するコストが高まり、貿易赤字となります。このまま円安が加速し、貿易赤字が継続し拡大すると、日本が投資などで稼いでいる部分を「食いつぶす」ことになります。最悪の場合、日本の「国全体の稼ぐ力」である「経常利益」が年間を通して赤字に転落する観測まで浮上しています。そして、赤字に転落した国の通貨は価値がさらに低下しますので、円安基調が継続する可能性もあります。
日本は、自動車産業などのモノを売って貿易で利益を上げている国と思っている方も多いかもしれませんが、ずいぶんと前に日本は貿易で黒字を出せなくなり、海外などに投資をした利益でトータルで黒字化している企業です。「貿易」から「投資」で儲ける企業に展開しています。これを「成熟した債券国」という立ち位置になります。そして、今回、円安が進み貿易赤字が拡大すれば、日本が経常赤字に転落すると「債券取り崩し国」になります。そうなった国の1つの生き残りの道は「金融立国」として海外のマネーを呼び込めるようにすることです。「債券取り崩し国」へのフェーズに移行するのは、もう少し先だと思っていた人が多いなかで、今回のコロナ、その後のインフレ、円安によって、ステージが早まった可能性があります。