10回目となる日米関税交渉、どうご覧になりますか
馬渕)■日本の基幹産業である、自動車関連の関税の行方は極めて大きな意味を持ちます。今回の“交渉と合意”の裏側にあるのが80兆円、5,500億ドル規模の対米投資です。これが関税の引き下げカギです。ところが、ホワイトハウスのファクトシートにも具体的な中身は書かれておらず、実態は不透明です。
日本とアメリカでは、投資に関する認識が違っているようですね
馬渕)■この80兆円は、日本政府の説明では、政府による直接投資ではなく……。政府系金融機関などをベースに融資・出資・保証を組み合わせた支援額の総枠と理解されます。そのため一度に80兆円が動くわけではありません。一方の伝えられているアメリカ側の認識ではアメリカが投資先を決めるかのような文言もあり、大きな食い違いが見られます。これに日本が従わざるを得ない状況になれば、極めて不利な構図におかれてしまいます。
そもそも80兆円もの資金をどうやって手当するのでしょうか?
馬渕)■例えば、この80兆円のうち9割は政府系融資。“1%”は 財投債が使われる可能性があります。公共事業や政府系金融機関への
資金供給などに活用される「財投債」で賄うとなれば、数千億円から兆円単位の国債発行になります。トランプ大統領の意向規模次第では規模は膨らむ可能性もあり、その場合は円安圧力や長期金利上昇を引き起こしかねません。財投債というのは、国の特別会計を通じて
発行される国債で、いわゆる赤字国債とは別枠です。ただし、大きな損失が出れば最終的には国民の負担につながる可能性があります。
今回の交渉で進展を期待したいですね。
馬渕)■結局のところ、今回の訪米の成否は、自動車関税の引き下げという「目に見える成果」と同時に……。80兆円という巨額投資を
「誰が決め、どう調達し、どんなリターンを日本にもたらすのか」。ここに尽きます。どんな結果が出るにせよ政府による説明責任が求められます。